コーヒー豆の生産処理(精製)|知って飲むともっと美味しい
生産処理とは、果実から種を取り出して皮を剝いて生豆(なままめ)するまでの工程のことです。
精製とも言います。
生産処理によってコーヒーの味わいが変わるので、覚えておくとコーヒーを選ぶ時の知識として役に立ちます。
ただ、「ブラジルはウォッシュド」「コロンビアはナチュラル」といった感じで、生産国によって主流な生産処理は決まっていることも多いので、生産国の特徴さえ覚えておけば十分という考え方もあります。
覚えればコーヒーオタクともいえるレベルの生産処理の知識。
詳しく解説していきます。
コーヒー知識としてはだいぶマニアックな方。
書かれていることも少ないし、生産国の味わいの知識を高める方を優先してもいいかも?
ナチュラル
特徴:コクや香りが濃厚
果実をつけたまま乾燥するため、乾燥する過程で発酵します。
そのため濃厚なコクや香りのある味わいになります。
果実の風味がぎゅっと濃縮されてフルーティーな味わいになるのも特徴です。
主流な生産国:ブラジル、ベトナム、エチオピア
コーヒーの生産量No1のブラジル、No2のベトナムの主流なので、実は一番馴染みのある生産処理かもしれません。
またコーヒー発祥の地エチオピアでも取り入れられています。
工程:果実がついたまま乾燥させる
収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させます。
まんべんなく乾くように一定時間転がす必要があり、意外と手間が掛かります。
乾燥期間は地域にもよりますが大体10日~30日。
脱穀は機械で行います。脱穀せずに保存すると品質が保持できるので、出荷直前や生産地で脱穀することが多いようです。
水の使用量が少ないため、水が豊富でない地域でもできます。
乾燥の際に雨に濡れたらNGなので乾季がはっきりしている地域で取り入れられています。
一番シンプルで工程が少ないので、コストが掛からないのも特徴かも
ウォッシュド
特徴:酸味が引き立つクリーンな味わい
ナチュラルと違い果肉がすぐに取り除かれるため、すっきりした酸味の引き立つクリーンな味わいになります。
甘みや果実感は抑えられるため、コーヒーの個性は抑えられます。
中煎りのコーヒー向きかもしれません。
主流な生産国:コロンビア、ケニア、エルサルバドル
コーヒーの生産量3位のコロンビアでの主流な方法になります。
アフリカを代表するコーヒーの産地「ケニア」や、政府が「コーヒーの国」としてアピールしている「エルサルバドル」でも取り入れられています。
コロンビアやケニアは品質のいい「アラビカ種」しか作らないから、ウォッシュドのコーヒーおいしい!と思う機会は多いかも。
工程:水槽で発酵させてから果実を取り除き乾燥
パルパーという専用の機械でコーヒーチェリーの果肉を取り除き、半日から1日半水槽につけて発酵させます。
発酵の過程で「ミューシレージ」という種を包む粘膜部分が分解されます。
発酵が終わったら乾燥させます。
果肉が除去されているので、乾燥期間はナチュラルよりも短く数日~1週間程度で可能です。
水槽設備や大量の水が必要なので、ナチュラルと比べるとコストは掛かるかも
ハニープロセス(パルプドナチュラル)
特徴:果実感のある甘みある味わい
ウォッシュドとナチュラルの中間にあたり、甘さとやわらかな酸味のある味わいになります。
ウォッシュドと比べて果実感があり、ナチュラルと比べてすっきりとしています。
主流な生産国:コスタリカ、ブラジル
コスタリカでは「ハニープロセス」、ブラジルでは「パルプドナチュラル」といいます。
総括してセミウォッシュドということもあるそうです。
「ハニープロセス」はコスタリカ考案。
「ハニー」は果実の粘液のことを指していて「はちみつ」のことではないので要注意。
工程:粘膜を残したまま果実を取り乾燥
工程はウォッシュドとほぼ同じですが、ウォッシュドでは完全に取り除くミューレージと呼ばれる粘膜部分をあえて残して乾燥させます。
ミューレージを残すことでウォッシュドと比べて甘みのある味わいになります。
ミューレージの除去割合によって少ないほうから
・ホワイトハニー
・イエローハニー
・レッドハニー
・ブラックハニー
の4種に区分されます。上からウォッシュドに近く、下に行くにつれナチュラルに近い味わいになります
スマトラ式
特徴:チョコレートやハーブ、スパイスのような味わい
ほろ苦く酸味が少ないのが特徴です。
重厚なコクとやや強めの苦味がありますが、風味はハーブやスパイスのような独特のスパイシーさがあります。
とある本では「土、草、革のような唯一無二の味」って書かれてたよ。
深煎り好き向けのイメージだね。
主流な生産国:インドネシアのスマトラ
湿気が多いインドネシアのスマトラで編み出された独自の手法になります。
インドネシアの「マンデリン」は人気がありますが、マンデリンはこの生産処理が行われています。
工程:2度乾燥させる
途中まではハニープロセスと同じで、ミューシレージがついたまま果肉を取り除き、ある程度乾燥させます。
湿った状態でパーチメント(果肉の中にある内皮)を脱穀しその後再び乾燥させます。
スタバでチーズケーキとおすすめのコーヒー頼むと、よくスマトラ出てくる気がする~
アナエロビック
特徴:ワインのような豊潤さとシナモン感
ワインを参考にして考案された手法なので、独特な豊潤さが特徴です。
シナモン感が強かったり、みたらし団子のような風味といわれることもあります。
生産国:コスタリカ
コスタリカが2014年に編み出した歴史に新しい生産処理です。
めったに出会わないので、出会えたら相当レアです。
ぜひお試しください。
ハニープロセスといいコスタリカってめっちゃチャレンジング
工程:酸素のないタンクで発酵させる
ワインを参考にして生み出された手法なので、まず酸素のないタンクで果実付きのまま発酵させます。
人工的に嫌気性環境をつくることによって、酸素がある状態では活動しない菌が働きます。
発酵後のタネを取り出す工程は他の生産処理と同様に行います。
カーボニック・マセレーション・セレクションって名前でハニー珈琲さんで取り扱いがあるので気になる人はぜひぜひ
まとめ:最初はナチュラルとウォッシュドを覚えればOK
これまで5つの生産処理を紹介しましたが、最初は「コクのナチュラル、すっきりとしたウォッシュド」とだけ覚えれば十分です。
「生産処理」という存在を頭の片隅に置いておいて、好きだなと思ったらパッケージなどをチェック。
「あ、これウォッシュドなんだ。好きかもしれんな」というスタンスで、お店でコーヒーを選ぶ時の情報というよりは、好みを知るための情報くらいにとらえておいた方がいいかもしれません。
そもそもとしてブレンドにはほぼ書かれないね
なんで?
いろんな国のコーヒー豆が混ざってるからね。
生産処理の情報まで書くと逆にわかりづらくなっちゃう。
いろいろな「シングルオリジン(単一品種のコーヒー)」を試したくなったら覚えるといいかも。